雲よ
おーい 雲よ
どこまで流れてゆくんだ?
風に吹かれて 急きも慌てもせずに
どこまで流れてゆくんだ?
あの人の好きなシュークリーム
あの人の好きなうさぎさん
あの人の好きなチューリップ
そんな形に変えて 急きも慌てもせずに
どこまで流れてゆくんだ?
○○○県○○○市○○町2丁目3番地
そこまで流れて行ったら声掛けてあげて
きっとあの人 子供のように喜ぶわ
(7月1日)
会いたい症候群
日常に疲れた時 フッと会いたくなる
そこに行けばどうしてこんなにも
心が休まるのかわからない
たぶん一日いたって飽きることはない
離陸と着陸の単調な繰り返し
けれどそれぞれにドラマがあって楽しい
最寄の駅で空港行きのバスを見かけた
気持ちを抑えられずに乗ってしまいそうになる
空港まで30分
会いたい 会いたい 会いたい
私がかかった 「会いたい症候群」
(7月2日)
(7月3日)
月灯り
今宵の月は格別だよと
縁側に座り コップに一杯冷酒を入れた
庭からは早咲きの桔梗を一輪 徳利に挿した
浴衣姿の私は君を想い 月に語りかける
もの言わぬ月は それでも煌々と私を照らす
月に秘めたる胸のうちを見透かされ
ほろ酔い気分の私は語りかける
「おまえだけには 話しておきたい気分だよ」と
今宵の月を見ているだろうか?
こうして私が月を相手に酔いしれていること
知っているだろうか?
月灯り・・ 夢灯り・・ 恋灯り・・
(7月4日)
浴衣の思い出
今年娘の浴衣を新調した
真っ赤な花火がとても綺麗な浴衣だ
これから浪速の祭りが次々と始まる
そして娘の浴衣姿に遠い日の自分を重ねる
紺に朝顔模様の浴衣だった
赤い鼻緒の下駄をカランコロン鳴らしながら
神社の坂道を歩いて行った
金魚すくいで金魚を2匹もらって ヨーヨー買って
いちごミルクのかき氷を食べた
幼くても浴衣を着たことで大人びて見えた
あの人の 「綺麗だよ」 と言った言葉が
今でも耳の向こうでこだましている
(7月5日)
魔女
昨日「ハリー・ポッター」を観てきた。
映画の世界にのめり込んで上機嫌で帰宅
少し疲れてソファーで転寝を始めた
夢をみた 私は魔女になって竹ボウキに乗り
大空を自由自在に飛んでいた
そしてステッキで次々と魔法をかけ始めた
もしも私が魔女になれたなら
お掃除もお洗濯もお料理も魔法でしてしまう
そして叶わぬ願いにみんな魔法をかけて
思い通りにするだろう
それは嬉しいことだけれど すべて願いが叶うと
きっと喜びや哀しみが分からないかもしれない
夢から覚めた時
今こんなにときめいて生きているのだから
やっぱり私は魔女になれなくてもいいと思った
(7月6日)
七夕の思い出
一枝の笹にたくさんの飾りつけをして軒下に掛け
七夕の夜を過ごしたのはついこの間のことのよう
子供たちとお星さまやスイカや茄子や胡瓜を
お絵描きして 折り紙でギザギザ飾りを作った
たくさんの短冊にはそれぞれに願いごとを書き
彦星さまや織姫さまに届くようにと祈りながら
笹の葉に結んだ
遠い日の七夕の思い出は いつも子供たちが主役で
私はとてもはしゃいで 主人は笑顔で見守ってくれた
四人家族の七夕 ささやかな幸せ
明日は七夕 ・・・
夜間飛行
今宵 天の川ではふたつの星がめぐり逢う
その儚くて切ない逢瀬は幾千年もの間
終わることなく繰り返されてきたラブストーリー
あなたと私の間にも大きな川が横たわり
架け橋が見つからない
今宵 満天の星空で 彦星と織姫が
願いを遂げるなら
地上の私たちも もう一度だけ再会したい
さあ 夜間飛行の始まりです
手荷物や過去はみんな置いていきます
あの空港で待っていてくださいますか?
すべての肩書きを捨てて
ひとりの女として 今夜あなたの許に参ります
(7月7日)
(7月8日)
夢空間
少しだけ贅沢でいつもと違う昼下がり
籐の椅子に腰掛けて読みかけの詩集を開く
焼きたてのシナモンクッキーに
ウェッジウッドのアフタヌーンティーを入れた
窓から吹く風に天使のささやきが聞こえる
あれこれとヒソヒソ話を始めては
ガラスの風鈴にこだまする
ウトウトと居眠りを始めた私に
天使たちが詩集の続きを読んで聞かせる
ゲーテやリルケやハイネの朗読は夢空間で広がり
ガラスの風鈴の音だけが現実の世界
戻りたい 戻りたくない 戻りたい 戻りたくない
(7月9日)
クリアランスセール
街は一斉にクリアランスセール開催中だ
どうしても買わなきゃいけないものではないのに
どうして買ってしまうの分からない
本当はどうして買ってしまうのかは
自分が一番分かっているけれど認めたくない
ここで予算外の出費をして
月末には帳尻を合わす私は有能な経理担当者
セールという言葉に敏感なうちは
まだまだ若いと自負しているつもりだが
(7月10日)
暑い暑いと言いながら
リンリンリン♪ リンリンリン♪
「冷え冷えデザート作ったから マドンナちに来て〜!」
女友達に電話をするとすぐに集まる地元の仲良し
彼女たちのとのおしゃべりはスペシャルな時間
バーゲンの話 夏休みの話 家族やペットの話
一日眠らずに話しても話題は尽きない
「ねぇねぇ・・これってここだけの秘密の話だけれど
凄いニュースを聞いたのよ」
秘密になど絶対にしておけない噂話
ドミノが倒れるように伝わっていく
暑い暑いと言いながら 冷たいお部屋で
冷え冷えデザート食べながら
いつも楽しくて際どくてヤバイ話をしている私たち