2005年クリスマスを記念して
大沢と今日子の「ニューヨーク恋物語」をもう一度よみがえらせて
パリの風景の中でスペシャルにお届けします
「ニューヨーク恋物語」終了から5ヶ月
久しぶりの登場です
なお 「ニューヨーク恋物語」をまだお読みでない方は
是非 連載の「ニューヨーク恋物語」から先にお読みください
Today's Gallery
2005年12月11日〜20日更新
今日子 夕方パリに着いたよ。
君が遠くへ旅立って2ヶ月が過ぎた。
今でも君からメールが届いていそうな気がして
仕事から帰るとメールのチェックをしているバカな僕がいるよ。
そんな僕を君は「弱虫」って笑うかい?
仕事が一段落ついて昨日ニューヨークを発ってパリに来た。
クリスマスをパリで過ごそうと思ってね。
知り合って2年目の12月、僕たちはパリでクリスマスを過ごしたね。
お互いが仕事の関係で欧州入りしていて、それが終わって
5日間だけ神様が与えてくれたクリスマスの休暇を
今日子と二人、パリで過ごしたね。
そんな今日子との想い出の場所をもう一度辿りたくてパリに来た。
今、エッフェル塔が見えるカフェで今日子にメールをしているよ。
もうすぐ西の空に夕陽が沈む。
あの日もこのカフェで二人向き合って珈琲を飲んだね。
君はフランス語も堪能で、この街に来てもイキイキしていたね。
僕はいつも君に頼っていた。
今でも僕は一人じゃ心細いよ。
そんな僕を残して君は天国に旅立った。
きっと天国でも弱虫の僕を心配しているかもしれない。
今日子、ごめんよ。
君に心配ばかりさせて・・・・。
今日子 今日は車を走らせてモン・サン・ミッシェルに来たよ。
朝はパリを7時半に発ったのに
やっぱりあの時と同じように4時間半もかかったよ。
パリの冬は夜が長くて出発した時にはまだ真っ暗だった。
そしてモン・サン・ミッシェルに着いた時は霧がかかっていた。
あの時もこの場所で車を止めて幻想的な修道院を眺めていたね。
いつまでもいつまでもこの場所から眺めていたね。
僕は昔から雨男なのに今日子といると太陽に恵まれる。
今思うと、君が僕の太陽だったんだ。
あの時もあんなに霧がかかっていたのに
モン・サン・ミッシェル修道院へ入ると青い空が広がったね。
不思議だよ。
僕は君といるといつもスペシャルに晴れ男になれた。
モン・サン・ミッシェルで見かけたあの恋人たちはもう結婚したかな?
僕たちとあの恋人たち、どっちが素敵だろうなんて言い合ったね。
お互いに「さあ どっちだろう?」と言ったけれど
僕はあの時「僕と今日子」の方がきっと素敵に映ると確信していたよ。
僕は今でも僕たちほどお似合いのカップルはいないと思っている。
今日はプラールおばさんのオムレツを食べて来たよ。
君のお気に入りだったね。
横浜に帰っても君はよくあのオムレツを作ってくれた。
君は本当に料理のスペシャリストだったよ。
今日プラールおばさんのオムレツを食べたら
今日子の作ってくれた味と一緒だったんだ。
でもこれは今日子がプラールおばさんのオムレツを真似て
僕のために作ってくれた。
プラールおばさんの方が先だったと事情を察して一人で笑ったよ。
あの時のレストランの可愛いテーブルクロスも一緒だったよ。
窓側の席に座って一人でオムレツを食べた。
僕にとってモン・サン・ミッシェルは君と見た幻のお城のようだ。
今日子 今日は日曜日でバスティーユのマルシェに行ったよ。
あの時オレンジを買ったおじさんの店を探したけれど
もう見つからなかったよ。
だから違う店でオレンジを買った。
二人でオレンジを買って青空の下で食べたね。
とっても甘かったのを覚えている。
乾いた喉を潤して、二人でこんなに甘いオレンジが
3つで1ユーローだなんて凄いわ!と喜んだね。
君はどんな小さなことにも感謝と感動をする女性だった。
マルシェで2時間くらい過ごしてそれからモンマルトルへ行った。
丘の上からパリの街を見下ろして
あの時の今日子のセリフをひとつひとつ思い出していたよ。
サクレ・クール寺院は変わらぬ美しさの中にいた。
この階段でパリの恋人たちのように僕たちもキスをしたね。
日本では出来ないことが出来る開放感。
あの時の君はとてもきれいだった。
この白亜のサクレ・クール寺院と同じほどきれいだった。
サクレ・クール寺院の左側の舗道を歩いてテルトル広場に行ったよ。
可愛い恋人たちが似顔絵描きに絵を描いてもらっていた。
あの時の僕たちのように描いてもらっていたよ。
あの似顔絵はパリから帰っても
横浜の今日子の部屋に、二人の思い出としてずっと置いていたね。
それを二人で眺めてはパリの思い出話をしたね。
この恋人たちもこの似顔絵を大切に部屋に飾るのだろうか?
テルトル広場では昔、青春時代の思い出に今日子のお母さんが
1枚の「モンマルトルの丘」の絵画を買った話をしてくれたね。
きっとお母さんは今でもその絵画を大切に持っているんだろうね。
あの時絵画を買い損ねたから
今日僕もパリに来た記念に「モンマルトルの丘」の絵画を買ったよ。
そして絵画の下に絵描きの彼のサインを入れてもらった。
この無名の画家がいつかピカソやルノワールのように有名になったら
きっとこの絵画も高く評価されるぞなんて
今日子のお母さんと同じようなことを思いながら買ったよ。
この絵画はニューヨークの僕の部屋に掛けておくつもりだ。
今日子 今日はシャンゼリゼ大通りへ出かけたよ。
そしてコンコルド広場から凱旋門までの約2kmの道のりを歩いた。
今日子はここがパリの中で一番好きだと言った。
どこまでも続くマロニエの並木道を歩いていると
今日子との色々なことを思い出してちょっと切なくなったよ。
そしてあの時のカフェで一人で珈琲を飲んだ。
今日子の好きなエルメスの本店にも行ったよ。
今日子はここでいくつ目のケリーバックを買ったっけ?
僕の給料の何ヶ月分もするバックを潔く買う今日子に
君の性格の清々しさを感じて気持ちよかった。
シャンゼリゼ大通りのルイ・ヴィトン本店は今年の秋にリニューアルして
とても立派な店になっていたよ。
名実共に世界のルイ・ヴィトンだね。
ディオールのお店にも行ったよ。
君はあの時ウインドウに飾られていたディオールのウエディングドレスを
とても気に入っていたね。
「私が結婚する時はこのディオールのウエディングドレスを着たい」
そう言っていつまでもいつまでも眺めていたね。
仕事を辞められない今日子の裏腹な一面
今日子の女心をあの時僕はとても可愛いと思ったよ。
そしてディオールのウエディングドレスを着た今日子の結婚相手は
絶対に僕でなきゃ嫌だと強く強く思ったよ。
今日子 今日はルーヴル美術館へ行ったよ。
そして「モナリザ」に再会した。
モナリザの微笑みは今もなお神秘的だったよ。
あの時二人で
「モナリザ」の絵画の前に立ってただ静かに見ていたね。
モナリザは不思議だ。
笑っているようにも見えるし、はにかんでいるようにも見えるし
哀しんでいるようにも見えるし、怒っているようにも見える。
美しい女性とはいくつもの顔を持つのだろうか?
それを「レオナルド・ダ・ヴィンチ」は忠実に描いたんだね。
偉大なる芸術家の巨匠だ。
今日はルーヴル美術館を一日かけてゆっくり観てまわった。
きっと今日子がいたら、色々と作品への想いを語り合えただろうと
ちょっと残念だったよ。
でも今日は本当にじっくり作品と向き合って
僕は本物の偉大さや強烈さを感じて少し打ちのめされた感じだよ。
芸術家とはきっと自分の命の炎を燃やして魂の絵筆で描き
作品を作り上げるような気がした。
でなければこんなに心に沁みてはこないし、打ちのめされたりはしない。
芸術の都で本物の名画と出合い、僕は少しだけ素敵な僕になった。
今日もまた有意義な一日だった。
オペラ・ガルニエにも何度も今日子と行ったっけ。
幾つもの道路が交差して、メトロが通過して
ここは朝も昼も夜も人通りが途絶えることがない。
この階段に腰を下ろして
二人で街角のおじさんから買った焼き栗を食べたね。
僕は栗の皮をむくのが下手で
そんな僕に今日子はひとつひとつむいてくれたっけ。
きれいなマニキュアをした指が真っ黒になってもむいてくれたっけ。
あの時の焼き栗は温かくて美味しかったね。
今日も焼き栗を買って一人でむいて食べたよ。
僕だって上手にむけたよ。
あの時はきっと今日子に甘えていてむけなかったんだと思った。
でも今日子、もう心配いらない。
僕は焼き栗だって一人でむいて食べられるよ。
今日子 そろそろパリも最後の日になってしまったよ。
今日はシテ島に渡ってノートルダム寺院へ行ったよ。
ゴシック建築の素晴らしさに息をのむ。
初期のゴシックはただただ精密さに満ち溢れている。
広場の中央に
赤いオーナメントをつけたクリスマスツリーが飾られていた。
今日子と行ったあの時は青いオーナメントだったね。
このツリーもとても雰囲気があって可愛いから
今日子に見せてあげたいと思った。
そして二人でこのツリーの前で、携帯電話で写真を写して
それを二人の携帯電話の待ち受け画面にしてなんて
僕はまた幼稚なことを考えてしまったよ。
でもそんな幼稚なこと二人でよくして笑い合ったね。
遠い昔のことのようでもあり、昨日のことのようにも感じる。
ノートルダム寺院の中はあの時と同じように荘厳な世界。
たくさんのステンドグラスから光がさしてきてまばゆかった。
ここでも彫刻や絵画をゆっくり観て回ったよ。
あの時はしなかったのに
今日僕はここで1本のロウソクに灯りを点して祈りを捧げた。
いつまでもいつまでも祈りを捧げた。
もしも神様が本当にいるならば
今度生まれ変わっても今日子に出逢いたい
そしてもう一度生涯をかけて愛し合いたいと神様に告げた。
それは僕の紛れもない真実だと今日子はわかってくれるね。
ロウソクの灯りが消えるまでいつまでも祈り続けた。
今日子 パリの街はクリスマスの雰囲気でいっぱいだ。
あの時もそうだったね。
今年も赤いクリスマスツリー、白いクリスマスツリー
小さいのやら大きいのやらパリの街中に溢れていたよ。
そんな中でパリジェンヌはいつも陽気に笑っていたよ。
僕もそれにつられて陽気に笑ってみた。
空を見上げたら飛行機雲が流れて行ったよ。
僕は今まで飛行機雲に感動などしたことがないのに
この雲の先に今日子がいるような気がして
いつまでも佇んでパリの空を眺めていたよ。
空を見上げればいつでも今日子が笑っているんだね。
今日子 僕はもう大丈夫だ。
最後の夜はもう一度コンコルド広場から凱旋門へ向かって歩いた。
あの時は二人で手を繋いで歩いたね。
手袋を持っているのに、お互いの温もりを感じたくて
手袋をポッケに入れて、僕たちはしっかり手を繋いで歩いたね。
今日子 僕は今日も手袋をしなかったよ。
僕の手のひらには今でも君の温もりが残っている。
今日子 たくさんのメールを書いたけれど
君から天国へのメアドを教えてもらってないことに気づいたよ。
このメールはどうしたら今日子に届くのかな?
ねぇ・・今日子教えておくれ。
紙飛行機にして空へ飛ばしたら今日子に届くのかな?
空に向かって大きな声で読み上げたら届くのかな?
今夜はクリスマスイブ・・・
僕のベットの枕元に置いておけばサンタクロースが来て
今日子のところへ届けてくれるのかな?
今日子 明日の朝パリを発ってニューヨークへ帰るよ。
君との想い出を辿りながら
君と過ごしたパリでクリスマスが迎えられて僕は幸せだった。
今日子 僕の想いはもう今日子に届いているね。
このメールはきっと君に届く。
そう信じてパリの街角やカフェで、またホテルの部屋で
僕はキーボードを叩き続けたよ。
今日子 安らかにお眠り・・・
僕の心の中から君は決して消えはしない。
僕はどんなことがあっても君を見ている。
今日子は僕の一番星だ。
愛しい今日子 パリからメリークリスマス!
愛しい今日子 僕からメリークリスマス!
愛しい今日子 Je t’aime (ジュ テーム)