January . 3
関西国際空港  (1月21日)
BGM・鳥に乗って
  Herr Geige
           出発


あなたとの楽しい一日が終わり夕暮れが来た
思い出は真珠のピアスとともに
宝石箱に入れて今日という日を閉じ込めよう
そして私は夜間飛行して帰ろう

繋がった回線が解けて 解けた回線が繋がって
あなたを追ってここまで来た

めぐり合うのも運命ならば 別れるのも運命

この場所から出発して一人で生きてゆこう
思い出は星の数ほど出来たではないか

私はもう後ろは振り向かない

U・K  (1月22日)
        ドアの向こうに


少しだけ現実から逃避したくてドアの前に来た
このドアの向こうは別世界
秩序も様式も言葉もすべてが違う

ドアの向こう側に行くことは
今までの私がリセットされて生まれ変わること

「君は自分をリセットできるのか」

そんな言葉が聞こえてくる
もう一人の私の声だ

答えは出ている
私ほど自分を好きな人間はいないのだから

ナイトクルーズ  (1月23日)
          あなたと私


お互いがどんなに想い合っても惹かれあっても
あなたと私は別の色
あなたの色に私は染まらなくて あなたもまた自分色を持つ

お互いの色を主張するから 惹かれ合うのがわかっていても
あなたとひとつの色になりたいと思う時がある

いっそ自分色を棄てて あなたの色に心を委ねて
あなたと共に流れてゆきたいと思う時がある

あなたと私 青と赤   あなたと私 男と女 
マーブルビーチ・りんくうタウン  (1月24日)
        冬の海


少し気だるくて 少しやるせなくて
誰もいない冬の海に来た

波打ち際に「愛」と言う文字を描く
引いては寄せる波に呑み込まれて消えてゆく
きっと永遠なんてありえないのかもしれない

海鳥たちが切ない声で鳴く
泣きたいのは私だよと言いかけてやめる

潮風よ 私の心をさらっていって
堰を切って流れ出す前に
お願い 私の心をさらっていって
アレンジメントフラワー  (1月25日)
       花かごに入れて


春が待ち遠しいのに外は寒くて手袋にマフラー
少しいじけて かじんだハートに息を吹きかける
吐く息が真っ白な朝だ

花かごにお花を入れて窓辺に置こう
少しでも春を感じられるかもしれない
お気に入りのBGMは「春のささやき」
春はもうどこまで来ているのだろう

春になったら春になったらと春にした約束ごと
あなたは覚えていますか?
あと何日過ぎれば春が来るのか
花かごのお花に聞いてみた
南海貴志川線  (1月26日)
          望郷


幾つになっても庭に咲く寒椿が見たいと
幾つになっても昔登った柿の木が恋しいと
幼子をおぶって帰りしふるさとよ

本当は寒椿じゃなくて柿の木じゃなくて
父さんと母さんに会いたかっただけ
父さんと母さんに愛されて過ごした年月は
今も私の中で消えることなく揺れている

無償の愛を教えてくれたかけがえのない人
こんなにも人を愛して
こんなにも人に尽くして
喜びを感じる人間に育ててくれた父さんと母さん

誰もいなくてももう一度ふるさとに帰りたい
ハイアット・リージェンシー・大阪  (1月27日)
        指定席


この椅子は
あなたのためにリザーブした指定席
春になるまで誰も座ることはない

春が来てあなたが訪ねてくれば
この席にやっとあなたの温もりが宿る

そしたらこの絵画を掛け替えよう
花と蝶がいっぱいの
「春うらら」という絵画に掛け替えよう

春よ来い 早く来い
この椅子はあなたと私の「春の指定席」

LESTAULANT ESCALE  (1月28日)
       24度のセラピー


外がもう少し暖かくなるまで
読みかけの本を閉じないで読み続けよう
この本のヒロインは私
佳境に入る前に一息ついてティータイム

ダージリンに気まぐれデザートお皿に載せて
甘さを口いっぱいに含ませましょう
一本のホワイトチョコを架け橋のように繋いで
ヒロインを彼の許へ渡してあげましょう

外は昨夜からのボタン雪 まもなく積雪10センチ
けれど私は大丈夫
甘さでセラピーしてお部屋を24度にしてるから
JR天王寺駅・駅前  (1月29日)
        想いを伝える


駅前の歩道橋の下で
週末になると野外ライブを開く若者グループ
自分たちで作詞作曲したオリジナル曲だ
このグループは一曲歌う度に
聴いてくれる人たちに感謝の気持ちを伝える

時には誰も聴いていなくても彼らは歌い続ける
何がこれほどまでに熱い気持ちにさせるのか
きっと未来のステージを夢みて歌っているのだ

想いを伝えることは難しい
けれど無心になって何かを伝えようとすれば
きっと伝わるものだと彼等から教えられた

いつかどこかのステージで歌う彼等を応援したい
難波パークス  (1月30日)
       かくれんぼ


夕やけ雲がかくれんぼ
背高ノッポのビルの後ろにかくれんぼ

けれど私はすぐに見つけられてしまう
どんなにがんばっても
あなたの千里眼には負けちゃうよ

「もうこれっきりよ」と絶交宣言しても
絶交は成立しないと宣言するあなた
あなたの千里眼はやっぱり的中して
元のサヤに納まるあなたと私

繋がってほどけて ほどけて繋がって
隠れても隠れてもすぐに見つかってしまう

でもそれは当たり前のこと
見つけてもらいたくて隠れている私だから
オペラ座の怪人  (1月31日)
        悲恋


あとどれくらい待てばいいの
私たちが結ばれて
熱く燃える血が全身を駆け巡って
眠っていたつぼみが開くまでに?
情熱の炎に
私たちが燃え尽きるのはいつ?
ここに来たからには後戻りはできない

「オペラ座の怪人」のミュージカルの一節だ

初恋の相手と結ばれたクリスティーヌ
けれど怪人との間には
計り知れないもっと崇高な愛があったはず
そして生涯想い続けた怪人の悲恋